近年、多くの企業で導入が進んでいるリファラル採用(社員紹介採用)。コストを抑えながら、社員の人脈を活用して企業文化にマッチした人材を採用できるため、特に中小企業やスタートアップで注目されています。
しかし、実際にリファラル採用を導入した企業からは、「社員がなかなか知人を紹介してくれない」「紹介された人材が活躍できない」「制度を運用しきれない」といった課題が多く聞かれます。
なぜリファラル採用はうまくいかないのか?本記事では、その難しさを掘り下げ、成功のためのポイントを解説します。
リファラル採用の難しさとは?
社員が紹介をためらう心理的ハードル
リファラル採用を成功させるには、社員が知人・友人を積極的に紹介してくれることが前提となります。しかし、実際には多くの社員が紹介をためらいます。その理由として、
「仕事とプライベートを分けたい」
「紹介した人が活躍できなかったら責任を感じる」
「社内の環境や待遇に自信がない」
といった心理的な抵抗が挙げられます。特に、現在の職場環境に不満を感じている社員ほど、自社を他人に勧めることに消極的になりがちです。
社員の人脈に限りがある
リファラル採用は、社員の人脈を活用するため、対象となる候補者の数には限界があります。特に、業界経験者や専門職を探している場合、社員のネットワークだけでは十分な母集団を形成できないことが多いです。
また、リファラル採用は「紹介する相手がいること」が前提のため、新卒社員やキャリアの浅い社員は人脈が少なく、紹介できる可能性が低いという課題もあります。
ミスマッチが発生しやすい
リファラル採用では、**「紹介されたから採用する」**という流れになりがちです。しかし、通常の採用プロセスと同じように慎重に選考しないと、スキルや価値観のミスマッチが発生するリスクがあります。
- 「社員の友人だから」という理由で採用し、実際の業務には適していなかった
- 入社後に「思っていた仕事と違った」となり、早期離職につながる
- 企業文化に合わず、チーム内の人間関係に悪影響を及ぼす
このようなミスマッチを防ぐためには、リファラル採用であっても適切な選考プロセスを実施することが必要です。
制度の運用が難しい
リファラル採用を導入する際、多くの企業が「紹介したらインセンティブを支給する」といった制度を設けます。しかし、運用の仕方によっては逆効果になることもあります。
- インセンティブ目当てで、適性の低い候補者を紹介される
- 紹介が成立しないと報酬が発生しないため、社員が動かなくなる
- 紹介が少ない社員と多い社員で不公平感が生まれる
また、制度を作っただけでは社員が動かず、**「リファラル採用をやっているはずなのに、実際にはほとんど紹介がない」**という状況に陥る企業も少なくありません。
リファラル採用を成功させるためのポイント
では、リファラル採用をうまく運用するにはどうすればよいのでしょうか?
社員にとって「紹介しやすい」環境をつくる
社員が知人を紹介したくなるような職場環境を整えることが最優先です。具体的には、
- 働きやすさや待遇を改善し、社員が自社をおすすめできるようにする
- 「紹介しても問題ない」と思える制度や文化を作る(例:紹介後のフォロー体制を整える)
- 「紹介した人の責任」にならないよう、評価基準を明確にする
リファラル採用の成功には、社員が「この会社なら安心して知人を紹介できる」と思える環境づくりが欠かせません。
人脈の活用範囲を広げる
リファラル採用は、社員のネットワークに依存するため、活用範囲を広げる工夫が必要です。例えば、
- OB・OGにも声をかけ、過去の社員からの紹介も受け付ける
- 社員のSNSやオンラインコミュニティでのつながりを活用する
- アルムナイネットワーク(退職者との関係維持)を活用する
採用対象を広げることで、より多くの候補者にリーチできる可能性が高まります。
選考プロセスをしっかりと設計する
リファラル採用であっても、通常の採用と同じように、スキルや適性をしっかりと見極めるプロセスを設計することが重要です。
- 通常の面接・試験プロセスを省略しない
- 紹介者がどの程度その人を知っているのかを確認する
- 企業文化との適合性を慎重に見極める
紹介されたからといって無条件で採用するのではなく、適切な評価プロセスを設けることで、ミスマッチを防ぐことができます。
インセンティブの設計を工夫する
単純に「紹介1件につき〇円」とするのではなく、紹介した人が活躍した場合に報酬を支給するなど、長期的な視点で設計することが望ましいです。例えば、
- 入社後3ヶ月・6ヶ月継続したら報酬を支給する
- 紹介者に追加のメリットを用意する(例:研修参加の機会など)
- 表彰制度を設け、社員の貢献を評価する
このように工夫することで、質の高い紹介を促進することができます。
まとめ
リファラル採用は、企業にとってコストを抑えながら良い人材を採用できる魅力的な手法ですが、運用の難しさを理解し、適切な仕組みを整えないと、うまく機能しません。
社員が自社を紹介したくなる環境を整え、適切な選考プロセスとインセンティブを設計することで、リファラル採用を成功へと導くことができます。
当社では、企業のリファラル採用の仕組みづくりや運用支援を行っています。興味のある企業様は、お気軽にご相談ください!