昨今の新卒採用の動きについては、採用プロセスの早期化、インターンシップ活用、ジョブ型雇用への関心の高まりなど、採用のあり方そのものが転換期を迎えつつあります。
本投稿においては2025年卒採用の主要なトピックを整理しつつ、企業の人事・採用担当者が今後の戦略を立てる上で注視すべき2026年卒・2027年卒の見通しについて考察します。
インターンシップにおける変化
企業は学生との早期接点を求め、インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムを積極的に展開しています。調査では、2026年卒予定学生の長期インターン参加率は約2割にとどまる一方、参加希望者は7割近くに達しました。つまり、学生側のニーズに対して供給が追いついていない状況です。
実際に長期参加してもらえるっ体制を整えることができている中小企業が少ない証拠といえます。
また、2022年のルール改定により、一定の条件を満たしたインターンシップ参加学生の情報を採用広報・選考に活用できるようになったこともあり、企業にとってインターンシップは母集団形成・プレエントリー獲得の主戦場へと変化しています。
インターンシップと呼べるのは基本的に5日以上の職場体験ができるものとされています
現在では、1日限りの業界研究イベントから、職場での実務体験を伴う長期プログラムまで多様な内容が展開されています。中でも「オープンカンパニー」と呼ばれる短期型プログラム(以前の呼び名は「インターンシップ」)は広く認知されつつあり、特に理系学生や専門職志望者を中心に、夏の段階から積極的に企業研究を進める傾向が見られます。
2027年卒以降では、こうしたキャリア教育型インターンの“設計力”が、採用成功のカギを握る可能性が高く、単なる早期接触だけでなく、「企業理解」「業務理解」「職場理解」に繋がる構成が求められるでしょう。
採用広報の時期や方法の変化
新卒採用のスケジュールは大幅に前倒し傾向です。大学3年3月より前に面接を開始した企業が約半数に上り、実際に内定出しも2月時点から行われています。2026年卒(現3年生)では3月1日時点の内定率が48.4%に達し、例年よりも早いタイミングで採用が進行していることがうかがえます。
背景には「採用競争の激化」「母集団の質・量の不安」「ジョブ型導入による選考工数の増加」などがあり、広報・選考を前倒しにせざるを得ない事情も見受けられます。採用サイトやダイレクトリクルーティング、SNS活用など多チャネルでの早期アプローチが常態化しつつある中で、学生側からは「早すぎて準備が追いつかない」「情報過多で混乱している」といった声も出ているようです。
企業には、早期化する一方で、学生の意思決定をサポートする段階的な情報提供が求められます。具体的には、選考前の段階で社風や仕事内容、育成方針などを可視化し、面接時に初めて情報を開示するような「後出し型」の情報提供は見直す必要があります。
2027年卒採用では、採用全体の“見える化”や“ナビゲーション設計”が強く問われる年になると予想されます。
ジョブ型雇用の進展や傾向
2025年卒学生対象調査では、選考時に配属先を知らされたいと答えた学生が80%を超えました。学生にとって「入社後にどのような仕事をするのか」が、企業選びの重要な基準になっていることは明らかです。
近年はジョブ型採用(職種別採用)への関心が高まっており、一部企業ではコース別採用や職種別募集を導入するケースが増えています。とはいえ、実際にジョブ型採用を本格導入している企業はまだ3割弱に留まり、企業側の制度設計や運用面の課題も残っています。
一方で、学生側の意識変化は顕著で、リクルートの調査では内定者の4割近くが「配属先が決まらず不安」と感じており、配属部署の事前明示を望む学生は8割近くにのぼります。加えて、「キャリアパス」「ジョブローテーションの有無」「スキルの可視化」といった将来的な成長の見通しを重視する声も多く聞かれます。
2026年卒・2027年卒採用では、ジョブ型の導入そのものが目的なのではなく、「本人の志向性やスキルと配属との納得感」を高めるプロセスが求められます。企業は採用時点で職務内容やキャリアパスを具体的に提示し、入社後のギャップを減らす努力が必要です。また、そのための教育・OJT体制の整備も、採用と表裏一体のテーマとなるでしょう。
まとめ
以上のように、2025年卒採用は採用活動全体の早期化・可視化・個別化というトレンドが鮮明に現れた年となりました。2026年卒・2027年卒では、インターンを起点としたエンゲージメント設計、広報・選考のナビゲーション化、そして職務ベースでの人材マッチング強化が、今後の採用戦略の鍵となるはずです。
企業にとっては、従来型の「総合職一括採用・一斉説明会」から、「個別志向に寄り添う設計」への転換が、本格的に問われる時期に入っているといえるでしょう。
一部出典(就職プロセス調査(2026年卒)「2025年3月1日時点 内定状況」 | 株式会社リクルート)