横浜高校19年ぶり優勝から学ぶチームビルディングと「やり切る力」

2025年3月、第97回選抜高校野球大会(春の甲子園)で横浜高校(神奈川県)が見事に優勝を果たしました​。横浜高校が甲子園で優勝するのは2006年春以来実に19年ぶりで、春の大会では通算4度目、春夏通算では6度目の快挙です​。

この歴史的勝利の背景には、チーム全体の結束力と信頼関係、明確な目標に向かって最後までやり抜く強いモチベーションがありました。本記事では、その優勝までの道のりや要因を振り返りながら、企業における社員育成、とりわけチームビルディングと社員のモチベーション向上にどのように応用できるかを考察します。人事担当者や経営層の皆様にとって、横浜高校の優勝物語は組織作りのヒントとなるはずです。

結束の力が生んだ快進撃:チームビルディングの重要性

横浜高校が春の甲子園を制した要因の一つに、チームの強い結束力と的確なチームビルディングがあります。昨年就任した村田浩明監督(横浜高校OB)は、チームの体制づくりに大胆な決断を行ったようです。その象徴が主将の交代です。前チームでは3年生の椎木選手が主将を務めていましたが、村田監督は「椎木選手はプレーに集中してほしい」と判断し、昨年5月に主将を2年生(当時)の阿部葉太選手に交代したようです。​
日々の練習で全力疾走を怠る選手に阿部選手が「そんなんじゃだめだ」と叱咤できていた点が監督の目に留まり、「学年は関係ない。裏表がなく、先輩からも後輩からも認められている」と評価されたからです​。

このリーダー人事により、上下関係にとらわれない風通しの良いチーム文化が醸成され、誰もが主体的にチームを支える体制が整いました。

実際、横浜高校は大会を通じて「チーム全員野球」を体現しました。エース級の投手を二人擁立し、試合ごとに継投策を徹底することで全5試合を勝ち抜いています​。

エース一人に頼り切らず投手陣全員で勝利をもぎ取ったこの采配は、メンバー各自の役割分担と信頼に支えられていました。攻撃面でも主将の阿部選手が要所で長打を放ちチームを鼓舞し、他の選手も得点や堅守で応えました。選手同士がミスをカバーし合い、ベンチも含め全員で戦う姿は、まさに結束力の賜物です。

チームにおける信頼

強いチームは各メンバーが自分の役割と責任を自覚し、互いに信頼し合っています。横浜高校のように、適材適所のリーダー配置と、全員が主体的に動ける環境を整えることが重要です。上司や先輩だけに頼るのではなく、若手にもリーダーシップの機会を与えることで組織全体の底力を引き出せます。社員同士が自由に意見を言い合い、ミスがあれば指摘し合える「心理的安全性」の高い職場文化も、生産的なチームを作る上で欠かせません。誰か一人のスター社員に業績が偏るのではなく、メンバー全員が力を発揮できる体制づくりが、安定した成果につながるでしょう。

高い目標と「やり切る力」が生むモチベーション

もう一つの勝因は、明確な目標設定と最後までやり抜く執念です。横浜高校は長い優勝ブランクを埋めるべく、「全国制覇」という高い目標をチーム全員で共有していました。阿部主将は就任時に「チームを変えたい。全国制覇がしたい」と宣言し、自ら率先して練習でも試合でも全力を尽くすことでチームを引っ張りました​。

事実、横浜高校が甲子園で最後に優勝したのは2006年春。「19年ぶりの優勝」を合言葉に選手たちは結束。昨秋の明治神宮大会で優勝を収めても慢心することなく、「追われる立場になった今まで以上に頑張らないとダメだ」と気を引き締め、さらに練習を重ねたと伝えられています​。

常に次の頂点を見据え、現状に満足せず努力を続ける姿勢が、最後まで戦い抜く「やり切る力」を育んだのです。

こうした強いモチベーションは、大会本番でも随所に現れていたようです。例えば決勝戦では、阿部主将が同点の場面で勝ち越し打を放ち、さらに守備でも相手の長打になりそうな打球をダイビングキャッチするファインプレーでチームを救っています。

プレッシャーのかかる場面でも選手たちが力を発揮できたのは、「このチームで優勝する」という揺るぎない目標と、積み重ねてきた練習の自信でしょう。ベンチからは常に大きな声で応援や指示が飛び、苦しい展開でも全員が「あきらめない」姿勢を徹底していたことが伺えます。目標に向かって全員が心を一つにし、最後まで戦い抜く文化がチーム内に根付いていたのです。

目標の明確化

明確で意義ある目標は、メンバーのモチベーションを高めます。企業でも、単なる数値目標だけでなく「〇〇業界でトップシェアを取る」や「お客様に最高の体験を提供する」など、チームが心から共有できるビジョンを掲げることが大切です。その目標に向けて各自が主体的に考え行動する風土を育むことで、困難に直面しても粘り強く取り組む「やり切る力」を持った社員を育てることができます。

また、リーダー自身が高い目標に向けて率先垂範し努力する姿を示すことで、メンバーも背中を押されるでしょう。達成困難なプロジェクトであっても、チーム全員が目的意識を持ち互いに励まし合えば、最後までやり遂げる推進力が生まれます。

まとめ【社員育成への応用:横浜高校の教訓を組織で活かすには】

横浜高校の優勝から得られる示唆を踏まえ、企業の人材育成やチーム作りに活かせるポイントをまとめます。

  • 明確な目標設定と共有: 組織としてのビジョンや目標を明確に掲げ、全社員に共有しましょう。横浜高校が「全国制覇」という目標を共有したように、社員が同じゴールに向かって努力できる一体感を醸成します。
  • 適材適所のリーダー育成: 若手を含め、能力や人望のある人材にリーダーの役割を与えましょう。年次や肩書にとらわれず適任者に責任を託すことで、本人の成長と組織全体の活性化につながります​。
  • チームで支え合う風土づくり: 部門や役職の壁を越えて協力し合える職場環境を整備します。メンバー同士が気軽に助言・指摘し合い、失敗してもフォローできる文化が、横浜高校の結束のような「強いチーム」を生みます。
  • 全員参加型の戦略: プロジェクトでも日常業務でも、特定のエース社員だけに頼らずチーム全員で取り組む体制を意識します。一人ひとりが自分の役割を果たし、必要に応じてタスクを柔軟にリレーし合うことで、組織として安定した成果を上げられます​。
  • 継続的な成長と粘り強さの支援: 社員が長期的な視点で成長し続けられるような研修機会やフィードバック機会を提供しましょう。高い目標に向けて挑戦し続ける過程で生まれる「やり切る力」を会社全体で評価し、称賛することも重要です​。

横浜高校の甲子園優勝物語は、組織作りや人材育成の本質を改めて教えてくれます。一人ひとりの役割とやる気が最大限に引き出され、チームとして結束したとき、困難な目標も達成できるということです。

人事担当者や経営者の皆様は、この高校野球での教訓を自社のチームビルディングにぜひ活かしてみてください。明確な目標のもと、互いに支え合い最後までやり抜く社員たちが育つ組織こそが、次なる快挙を生み出す原動力となるはずです。

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